連携展
2013年2月19日(火)~3月7日(木)
2012年5月に開催された「公募団体ベストセレクション 美術 2012」展の出品作家の中から、活躍が期待される優秀な新進作家6名を紹介するグループ展です。
本展は、公募団体に所属する有力な新鋭作家6名に注目し、その多様な表現を連立個展形式で紹介する展覧会で、出品作家は2012年5月に開催した「公募団体ベストセレクション 美術 2012」展の中から、公募展活性化企画審査会を経て選抜されました。
彼らは、自身の新しい表現を探求しながら、公募団体に身を置き、定期的に団体展に出品していること以外は、表現方法や技法、表現しようとするテーマやモチーフもそれぞれ全く違います。本展は、この6名の作家が、展示空間に合わせて選んだ、新作を含む計50点の作品で構成します。6名の作家の出品世界にじっくり浸ることのできる空間となるとともに、各作家の作品をまとめてみることのできる絶好の機会となるでしょう。
出品作家(50音順)
今林明子 【洋画】 1985年生まれ、二紀会準会員
岩崎 純 【洋画】 1973年生まれ、行動美術協会会員
岸野 香 【日本画】1966年生まれ、日本美術院招待
児島新太郎【洋画】 1973年生まれ、光風会会員
嶋崎達哉 【彫刻】 1964年生まれ、二科会会員
濱田富貴 【版画】 1972年生まれ、日本版画協会会員
今林明子《陰翳礼讃》2012年
油彩、綿布・白亜地パネル 作家蔵
岩崎純《time》2012年
フレスコ、パネル 作家蔵
岸野香《水精》2011年
紙本着色 作家蔵
児島新太郎《満月のゆうべ》2012年
油彩、パネル 作家蔵 撮影:末正真礼生
嶋崎達哉《Donna Sciarpa》2011年
楠・ヒバ、漆 個人蔵
濱田富貴《かたち—63”世界樹”》2012年
エッチング・アクアチント/アルシュ紙、雁皮紙 作家蔵 撮影:末正真礼生
閉じる
当日券 | 一般 500円 / 65歳以上 300円
団体券 | 一般 400円
※団体割引の対象は20名以上
※学生以下は無料
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1名まで)は無料
※いずれも証明できるものをご持参ください
閉じる
出品作家が作品の前で、自作について自由に語る、リレー形式のトークです。
第1回
第2回
本展担当学芸員が参加者の皆様と一緒に会場を回り、作品について対話をしながら鑑賞します。
対話の中から生まれる発見、共感、驚きをお楽しみください。
閉じる
岩崎純さん
【洋画】1973年生まれ
行動美術協会会員
Q1. 「新鋭美術家」に選出されたときのご感想をお聞かせください。
A1. とっても嬉しかったのですが、電話を下さった行動美術協会の石原さんが自分以上にハイテンションになっていたので、逆に冷静な感じで、その日はすぐ寝ました…
Q2. 今回の展示の見どころを教えてください。
A2. 今までに描いたことのない巨大な作品に挑みました!
Q3. 今回の展示で、最も苦労した作品やエピソードをお聞かせください。
A3. 毎回毎回、制作途中で必ず壁にぶち当たるので、『この作品が…』というのは無いですね。
Q4. 今回一緒に出品する作家の皆さんについて、どのような印象をお持ちですか?
A4. 児島くんとは、大学・大学院の6年間一緒の教室で勉強してきた仲なので、私は彼の事を何でも知っている・・・(笑)
濱田富貴さん・今林明子さんとは、最近Facebookでお友達になり、日々の書き込みよりお二人ともかなりストイックに制作されているようで、自分もこのままではマズいと思いパソコンをアトリエに持ち込み、お二人のFacebookと「にらめっこ」しながら制作してました。
Q5. 制作するときに一番大切にしていることは何ですか?
A5. ライブ感!(スピード感・荒々しい感じが画面に残ればOK!)
→最終的には、制作風景をニコニコ生放送でライブ中継しながら、計1000人以上の視聴者と共に生の声(コメント)をリアルタイムに聞きながら制作しました(ちょっとしたライブペインティング)
※人に見られながら制作すると、普段より大胆なアクションをしてしまう自分がいる…それが画面に少なからず影響を与える。
Q6. 岩崎さんが覚えているアートの原体験はどんなものですか?
A6. 小学生の頃に通っていたお絵かき教室で、先生が描いた『Dr.スランプ アラレちゃん』に感動し、それ以来、テスト用紙の裏には必ず漫画のキャラクターを描くようになった。
Q7. 現在の岩崎さんに大きな影響を与えたものは何ですか?(美術、映画、音楽、本、人etc.)
A7. 好きな画家は、アントニ・タピエス、サイ・トゥオンブリー、ゲルハルト・リヒターなのですが…今までフレスコを続けてきた理由とすれば、大学時代に博物館で見たフレスコ画の破片(むき出しになった顔料の輝き)に感動して、この輝きを自分の作品でも再現できないかと日々研究するようになった。
Q8. 現在のアート業界について、感じていることはありますか?
A8. 日本現代アート(奈良・村上・会田など)好きです!!
でも、私にはアレはできないので、別のアプローチで挑戦したいですね。例えば、21世紀にもなって『公募団体に出品し続ける勇気ある天才アーティスト!』みたいなww
10年後では逆に、公募団体がアート業界の最先端になっているかもしれないし…
時代(流行)は必ず繰り返す!美大生諸君!今がチャンスだ!公募展が世界を変えちゃうよ!
(回答は原文のまま。2012年2月19日掲載)
閉じる
今林明子さん
【洋画】1985年生まれ
二紀会準会員
Q1. 「新鋭美術家」に選出されたときのご感想をお聞かせください。
A1. ベストセレクション展に選出された時をさらに上回る驚きでした。出品者はどなたも実力のある作家ばかりでしたので、まさか自分が選ばれるとは思いもしませんでした。
Q2. 今回の展示の見どころを教えてください。
A2. 本展用に仕上げた横幅5.5メートルの新作です。それと同時に小さい作品も展示しますので、ミニマム~マキシマムの表現を体感していただけたら。
Q3. 今回の展示で、最も苦労した作品やエピソードをお聞かせください。
A3. ずばり上記の新作です。かなり大きな作品でパーツごとにわけて描いています。一度に繋ぐとアトリエから出せなくなるので全貌を想像しながら描かなければならず苦労しました。
Q4. 今回一緒に出品する作家の皆さんについて、どのような印象をお持ちですか?
A4. ジャンルやスタイルは違えど、どの方も独自の作風を確立された方だと思います。一緒に展示させていただき光栄です。
Q5. 制作するときに一番大切にしていることは何ですか?
A5. 主観と客観のバランス。
Q6. 今林さんが覚えているアートの原体験はどんなものですか?
A6. 3歳の時に家の近所で野草をスケッチしていたら、そばでおままごとをしていた姉に描いていた花を引っこ抜かれたことです。かなり怒ったので強烈に覚えています。
Q7. 現在の今林さんに大きな影響を与えたものは何ですか?(美術、映画、音楽、本、人etc.)
A7. 中学、高校、大学、大学院時代、それぞれの恩師です。
Q8. 現在のアート界について、感じていることはありますか?
A8. 公募団体に対する正しい認識がなされていないのが気になります。広く一般の方々に知ってもらうためにもより対外的なアピールをし、内輪でとどまるのではなく会派やジャンルを超えた交流も必要不可欠ではないでしょうか。
(回答は原文のまま。2012年2月19日掲載)
閉じる
児島新太郎さん
【洋画】1973年生まれ
光風会会員
Q1. 「新鋭美術家」に選出されたときのご感想をお聞かせください。
A1. とても光栄に感じました。
Q2. 今回の展示の見どころを教えてください。
A2. 切り口を変えた公募団体の展示内容と関係が見どころだと思います。
Q3. 今回の展示で、最も苦労した作品やエピソードをお聞かせください。
A3. 今展用の新作に挑戦しましたが、時間的な制約が大変でした。
Q4. 今回一緒に出品する作家の皆さんについて、どのような印象をお持ちですか?
A4. 刺激的な方々という印象を持っています。
Q5. 制作するときに一番大切にしていることは何ですか?
A5. 自身が面白いと感じることをすることです。
Q6. 児島さんが覚えているアートの原体験はどんなものですか?
A6. 読む本を選ぶ時に表紙の絵で決めていたことです。
Q7. 現在の児島さんに大きな影響を与えたものは何ですか?(美術、映画、音楽、本、人etc.)
A7. 音楽「満月の夕」ヒートウェイヴ版(アン・サリー)に影響を受けました。
(回答は原文のまま。2012年2月20日掲載)
閉じる
濱田富貴さん
【版画】1972年生まれ
日本版画協会会員
Q1. 「新鋭美術家」に選出されたときのご感想をお聞かせください。
A1. 大変嬉しかったのですが、開催時期が自身の個展とほぼ重なっていて、正直どうしようと思いました。
Q2. 今回の展示の見どころを教えてください。
A2. 今回は版画にしては大型の作品を中心に展示するので、どのように作り込んでいったのかをご覧いただければと思います。
Q3. 今回の展示で、最も苦労した作品やエピソードをお聞かせください。
A3. 通常の版画作品の額装はしないので、その展示方法でかなり悩みました。あと最後の作品がなかなか完成しなかった。
Q4. 今回一緒に出品する作家の皆さんについて、どのような印象をお持ちですか?
A4. 初めてご一緒する作家ばかりなのですが、作品を見ると皆さん真面目な方々なのかな、と。
Q5. 制作するときに一番大切にしていることは何ですか?
A5. 版面に触れた時の手の感覚。自分の時間軸の中で100%以上の完成度を目指して制作していく思考の持続。
Q6. 濱田さんが覚えているアートの原体験はどんなものですか?
A6. 幼少の頃、病気で入院していた時に初めて見た自分のレントゲン写真と、階段から落ちて手の甲の丸ごと無くなった皮膚が再生されていく様子を見た記憶。
Q7. 現在の濱田さんに大きな影響を与えたものは何ですか?(美術、映画、音楽、本、人etc.)
A7. 30年近くずっと習ってきた書道とその先生、高校時代の空手道部、大学受験の浪人時代。ジブリの「風の谷のナウシカ」
Q8. 現在のアート界について、感じていることはありますか?
A8. 作家に対してのサポートがもっとあればといつも思っています。
(回答は原文のまま。2012年2月20日掲載)
閉じる
嶋崎達哉さん
【彫刻】1964年生まれ
二科会会員
Q1. 「新鋭美術家」に選出されたときのご感想をお聞かせください。
A1. 一昨年二科展でローマ賞を受賞した流れで「都美セレクション展」に選抜され出品させていただきそれだけでも十分ありがたいと思っていたのですが、思いもかけず「新鋭作家展」に選んでいただき、本当に光栄に思っております。
Q2. 今回の展示の見どころを教えてください。
A2. まるで個展のような作品数で、このような広い空間で絵画とのコラボレーションという形で展示されるというのは私自身もどのように見えるのか想像がつかないというのが本音ですが、この新しい都美術館の照明やスポットライトの効果が非常に彫刻に適していると思っています。彫刻の密度と陰影がより印象的な効果を生みだすのではないかと期待しております。
Q3. 今回の展示で、最も苦労した作品やエピソードをお聞かせください。
A3. 女性像の「Donna」シリーズは、いくつかのパーツの組合せから成る100センチほどの大きさですが、等身大の人体の丸彫りよりも制作に時間がかかります。一体に約1年かけて制作しています。(同時に他の作品と並行しながらの制作です)
今回、このお話をいただいたのが9ヶ月前だったので、新作を仕上げるのにクリスマス、正月返上で制作していますが、搬入日ぎりぎりまでかかりそうです。
「Donna Verde」「Donna Sciarpa」は、現在海外にあるので、今回の展示のため船便で送ってもらうなど、大掛かりな搬送となりました。
Q4. 今回一緒に出品する作家の皆さんについて、どのような印象をお持ちですか?
A4. 今回の出品作家の中で自分が一番の年上ということで、複雑な心境です。皆さん、若いながらも自分のスタイルを持っており、刺激になります。
Q5. 制作するときに一番大切にしていることは何ですか?
A5. 時間が空いた時はたとえ1時間でも制作するようにしています。
制作の中でも、ただの作業という時と、時間をかけて徐々に集中力を高めて彫刻に魂を入れる瞬間があるので、その使い分けやタイミングを考えています。
当然ですが、今の自分が持っている力を出し切ってやり抜くこと、人に見えないところまでも全力を尽くしてやりきりたいと思っています。
Q6. 嶋崎さんが覚えているアートの原体験はどんなものですか?
A6. 岐阜県出身のためか、円空に対しては特別の思い入れがあります。
中学時代の美術の恩師が円空仏を彫っていたのですが、その作品を学校の美術室で見たときに、大胆な形やノミ使い、微笑を浮かべた表情、なんともいえない存在感に目を離すことができませんでした。
それ以来、夏休みの自由研究などで切れないノミとのこぎり1本で、自分でも円空仏を見よう見まねで彫ったりしていました。
Q7. 現在の嶋崎さんに大きな影響を与えたものは何ですか?(美術、映画、音楽、本、人etc.)
A7. 私が大学・大学院在学中に彫刻家としての表現方法を模索していた頃、籔内佐斗司さんや舟越桂さんが注目され、第一線で活躍されていました。今ほど木彫の具象作家で活躍されている方が多くなかった時代ですが、お二人が発表する作品の作風の変化を目の当たりにすることができたのはとても勉強になりました。日本の古来からの技法を取り入れつつも現代の作品として表現し、日本の家屋にも置けるサイズなど考えられた作品に少なからず影響を受けていると思います。
Q8. 現在のアート業界について、感じていることはありますか?
A8. 学生時代、大学で彫刻の技術を身につけるも、その後彫刻家として外部にアピールする方法がわからずに制作をあきらめ、彫刻から遠ざかっていく友人が何人もいました。若い世代の公募展離れが加速している事も感じていますので、自分たちの活動をもっと風通しのいいものにし、改善していく点も多いと思います。
ですが、比較的若い作家は、インターネットなどを通じて自分の作品を発表する機会が多いようで、大変楽しみです。アナログ世代としては羨ましい限りです。
自分の作品がどのように評価されるかというのは、作家にとって大きな指針となりますので、今後は業界でも、年功序列や派閥の垣根を越えた自由な発想に注目し、とりあげていってほしいと思います。
(回答は原文のまま。2012年2月21日掲載)
閉じる
岸野香さん
【日本画】1966年生まれ
日本美術院招待
Q1. 「新鋭美術家」に選出されたときのご感想をお聞かせください。
A1. ベストセレクション展に選んでいただき、新しい都美術館で展示できたことも嬉しかったのですが、今回の新鋭美術家展での個展形式での発表というのは考えたことがないことでした。このような貴重な機会をいただけて本当に大変嬉しく思いました。
Q2. 今回の展示の見どころを教えてください。
A2. 広い空間をいただけたので、新作を含めた近年の作品で構成しました。デンマークでの取材の作品が少しまとまって見ることができます。制作時期が少しずつ違いますので、並んだ時の印象も楽しみです。
Q3. 今回の展示で、最も苦労した作品やエピソードをお聞かせください。
A3. お話をいただいてから、新作の2点の制作時間がなかなかとれずに、ぎりぎりまで制作しました。
Q4. 今回一緒に出品する作家の皆さんについて、どのような印象をお持ちですか?
A4. 前回のベストセレクション展の時のアーティストトークにおいて、作品の前でそれぞれお話を伺っていて、異なる分野の制作の話はとても興味深く刺激になりました。それぞれの世界を持っていらして、ご一緒できることが楽しみです。
Q5. 制作するときに一番大切にしていることは何ですか?
A5. モチーフに出会ったときの印象を大切に、最後まで忘れないようにすることです。私は取材先で実際に見たり触れたりした印象を描くので、スケッチを重ねたり、言葉にしたりイメージを明確にできるようにつとめています。
Q6. 岸野さんが覚えているアートの原体験はどんなものですか?
A6. 印象に残る絵具のイメージですが、実家の漆の修復をする薄暗い仕事場、洗い場の水の中に沈む彩色片の緑や、赤の色は、キラキラしていて子ども心に鮮明な印象です。
古典作品が好きで、模写などを勉強したのも、その辺のイメージがあるのかもしれません。
Q7. 現在の岸野さんに大きな影響を与えたものは何ですか?(美術、映画、音楽、本、人etc.)
A7. 大学院にて古典模写を勉強し、その後、田渕俊夫先生、宮廽正明先生の研究室の助手をさせていただき、制作に打ち込まれる姿に間近に触れることができたことです。院展に出品することになりましたのも、こうして制作を続けているのも、この時の先生方や、先輩や、友人との出会い、濃密に過ごした時間のおかげです。
Q8. 現在のアート界について、感じていることはありますか?
A8. 大学で日本画の学生と関わっています。インターネットが広まり、発表の形も機会も変わってきているように感じますが、私の学生時代も制作を続けたいけれど、どうしたらいいかわからないと思っていましたが、その不安は今の学生も抱えていて、多くの人や機会に出会えるようになるといいと思っています。
(回答は原文のまま。2012年2月26日掲載)
閉じる