東京都美術館は36点の書作品を収蔵しており、毎年1月にコレクションによる展覧会を開催しています。当館を舞台に繰り広げられた現代の書の歴史をひもとき、テーマに沿ってコレクションの「書」作品の魅力を紹介するものです。
本年は漢字の書を取り上げます。大陸から伝来し、長い歴史を持つ日本の漢字書ですが、第二次世界大戦後、大きな変革期を迎えました。ひとつは伝統系における明清調(みんしんちょう)の流行と碑学派(ひがくは)の隆盛です。現代の書が机上の実用のものから、高い壁面の美術館で鑑賞される作品へと発展する際、明清朝の長条幅の書風は、戦後のロマンチシズムとも相俟って大流行しました。碑学派は西川寧や青山杉雨を中心として、王羲之以前の金文や、秦、漢の石刻文字への注目を背景に、古代の文字による変化に富み、豊かな表情の作品を生み出しました。
一方、現代系における漢字書では、手島右卿や松井如流らが牽引した少字数の書(大字書)が誕生しました。文字数を1~2文字に限定し、時には淡墨を用いて、文字の造形性を強調することにより、読める書や感じる書という、美術として鑑賞される書を標榜し発展しました。
本展ではこうした美術としての書、すなわち「感じる書」を探求し、現代の書のあり方を追究した、漢字書の現代的展開の軌跡をご覧いただきます。