荒木珠奈(1970年-)は、へんてこなかわいらしさとゾクッとする感覚が混ざり合った世界観が魅力の作家です。光と影、昔話、家や舟といった物語を想起させるようなモチーフを用いて、私たちの心の底にある懐かしい感覚や感情、記憶を揺さぶりながら、非日常の世界へと誘う作品を数多く発表してきました。
本展では、詩情豊かな版画や立体作品をはじめ、メキシコの先住民やさまざまな国のルーツを持つこどもたちと共同制作した作品など、初期から最新作までの90点以上を紹介します。物語性あふれる作品がもたらす鑑賞体験を通じて、「越境」「多様性」「包摂」といった国や地域を越えて現代社会が共通して抱えるテーマについて思いを寄せ、一人ひとりの日々の暮らしのかけがえのなさ、生きていくことのポジティブな力を見つめることのできる展覧会です。
開催地である「上野の記憶」が造形物と化したかのような、見る人の想像力をかきたてる大型作品を新作。美術館の「そこ(底)」とも言える巨大な地下展示室に、日常と非日常の境界を行き来するような、不思議な旅が味わえる空間をつくり上げます。
カラフルで幻想的な展示空間が作り出す参加型インスタレーションや、現実と空想が融合したような詩情あふれる版画や立体作品などにより、ちょっと怖くて懐かしい空間を体感できる展示構成を試みます。
90年代から国内外のグループ展や個展で作品を発表してきた荒木珠奈。本展では、初期の作品から、本展のための最新作まで、荒木ならではのコラボレーションを含む、幅広いジャンルの多様な作品を網羅します。