歴史をひもとく

  • 文:山村仁志(東京都美術館元学芸員、府中市美術館館長)

東京都美術館100年のトピックを、各時代の出来事やニュース、話題、人物などに焦点を当てながら詳しく紹介していきます。
1926(大正15)年から現在(2026年)までの歴史を振り返って、美術館に関わってきた人々に思いを馳せるシリーズです。

  • *美術館の名称について:1943年7月の都制施行に伴い、「東京府美術館」から「東京都美術館」への名称変更されました。

❻ 東京府美術館―日本で最初の公立美術館

日本で最初の「博物館」は、1872(明治5)年に湯島聖堂の大成殿で開かれた博覧会を前身とする東京国立博物館です。続いて、1895年に奈良国立博物館、1897年に京都国立博物館が開館しました。また、1917年には、私立美術館として初めて、東京虎ノ門に大倉集古館が開館しました。1930年には、岡山倉敷で西洋近代美術を常設展示する大原美術館が開館しています。博物館(美術館含む)は、国立、私立が、公立に先駆けていました。
1926年に開館した東京府美術館は、「東京府」という地域行政機関が設立した初めての「公立美術館」です。東京府美術館の後、京都市美術館は1933年、大阪市立美術館は1936年にそれぞれ開館しています。3館とも、主に公募美術展の貸ギャラリーとしてそれぞれの地域で社会的な使命を果たし、また文化財を保存して歴史を刻んできました。
大正から昭和前期にかけて、国民の文化に対する需要が高くなって、日本全国で多くの作家がそれぞれの地域で展覧会場を必要としていました。しかし、関東以北では東京府美術館がその唯一の場所でした。ここで、多くの新しい美術作品が生まれ、作家が育ち、優れた展覧会が開催され、新しい美術が生まれてきたことには、日本近代美術史にとって大きな意味があると思います。

東京府美術館(旧館)正面大階段  当館アーカイブズ
東京府美術館(旧館)正面大階段  当館アーカイブズ

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