連携展無料
2015年11月26日(木)~12月20日(日)
閉じる
閉じる
野地耕一郎(泉屋博古館分館長)
日本画グループの応募が多かったのは、意外だった。日本画の人たちは群れたがるのでしょうか。ただ「新しい日本画」の創造という割に、内容や表現の「新しさ」ということが明確に捉えられていない印象だ。その中で、「creo」は「絵画の構造」を「建築の構造」との差異や軋轢、或いは同調をさぐる姿勢が見えて、両者がどのように響きあうのか楽しみだ。「東北画は可能か?」については、三瀬夏之介氏の口車に乗せられてしまったのだが、日本海地図から「東北」の土着性の淵源についての考察は説得力があった。朝鮮半島の平壌から一番遠いのが東京で、九州と東北が一番近いことに気づくと、地勢的にも俄然面白くなる。国境を設けないで見たときに、日本画がどのような意味を持つのか逆に照射してくれるならば面白い。
大谷省吾(東京国立近代美術館企画課企画展室長・主任研究員)
日本画のグループが多かったというのは野地さんと同感です。何か新しいことをしたいという意欲はそれぞれ感じられたのですが、ある枠組みの中での新しさに留まっているような印象を受けたところもありました。その中で、選出されたグループには、何かやってくれるのではないかという期待があります。また「SUNSHINE NETWORK Japan」が戦争画をテーマにしようとしているのは意欲的と思いますが、戦争画というものは非常に複雑な問題をはらみます。彼らは、あくまで美術の問題として考えたいとプレゼンしてくれましたが、観客の中には、必ずしもそう受け取ってくれない人もでてくるかもしれません。そうした人たちに対しても、建設的に議論が開かれていけるような準備を期待したいところです。
笠嶋忠幸(出光佐三記念美術館次長)
書のグループは、今回二次審査に進出するグループがなかったのは残念。例年あるようですが、書類の記入ミスであったり、内容不足だった点に問題があると聞いている。若手作家にとって、こうしたチャンスは中々ないので1~2グループは入ってほしいと思う。書のグループの場合、こうしたトライに慣れてないところもあって、どうしたら可能なのか、何か妙案があったらいいと。難しい気もするが今回の「芸術コンプレックス」のような本人たちが楽しんでいるなあという企画、そうしたニュアンスが、書のグループの若者に対して伝わるとよいのだが。このグループ展公募にあたっては、考え方や感覚的なズレの部分を、自分のフィールドに戻ってまた広く伝えてゆきたい。
南嶌宏(女子美術大学教授)
今回も色々な応募が出てきたが、様々な要素を受容していくことが、東京都美術館の新たなイメージを広げていく機会になっていくのではないか。またそのことが美術業界においても重要なアナウンスとして響くものであることを確信する。それぞれの実現には大変なこともあるだろうが、美術館の仕事の大きなミッションと捉え、また作家たちにもここでやらせてもらえたと思ってもらえるよう、最善を尽くしてほしい。例えば、「SUNSHINE NETWORK Japan」のようなグループの真摯な志を受け止めることが、美術館の真の信用につながるわけで、選考委員としてもそのサポートを果たしていきたいと思う。いずれにせよ年々広がりを見せる応募案が十全にその成果を形づける展覧会となって、多くの観客の目に触れることを期待したい。
真室佳武(東京都美術館館長)
日本画の公募団体に所属する作家たちによるグループが、新しい表現を追求するという企画案があった。既存の団体からはそのような動きは少ないが、団体にこだわらず仲間と展示企画を行うといった動きは、アートシーンでは必要であり、美術館も応援していきたい。さまざまな表現に対し、美術館として適切な判断をし、出品者と美術館の双方が納得できる展覧会を開催していきたい。
閉じる